うつでなまぽ

うつ病でPTSDでアスペで生活保護受給中の生きものがいろいろ書きます。

昔の話「父方の祖父たちの話」

 なんとなく思い出したので書く。

 

叔父の話

 父親の家族構成は、祖父、祖母、叔父(わたしから見て)。つまるところ父親には弟がいる。顔はあまり似ていない。祖父はなかなかの男前なのだが、祖母はまあ不美人で、父親は祖父強めの祖母ミックス、叔父は祖母強め、みたいな顔をしている。性格はまあ似ている。が、外面はあまり似ていない。というか叔父の外面は見たことがない気がする。

 

 この叔父は結婚していないのだが、結婚しないというよりできないタイプなんだろうな、と幼心に思っていた。なんか鬱陶しいからだ。父親に通ずるところがあるのだが、自分がおもしろいと思っていることをウケていないのに繰り返す。延々と。

 波田陽区の「残念! なんとか斬り!」とかいうギャグが流行っていたころに、正月のあいさつに祖父宅を訪ねたら(叔父は祖父祖母と同居している)、ほんの30分くらいのあいだに10回くらいそれを繰り返していた。だれも反応せず、だれもおもしろがることもないのに。

 そのときの年齢を覚えていないが、「お父さん、うるさいって言ってくれないかな」と思っていたような気がする。祖父は孫に金をかけてはくれたが、強烈な男尊女卑者なので、男がやることに女がくちをだすと不機嫌になるのだ。ちなみにめっちゃ右翼的考えの持ち主でいまだに中国をシナというし韓国を朝鮮とひとくくりにするし三国人とか言う。太平洋戦争時にはまだ学童で、勤労奉仕くらいしかしていなかったはずなのだが。教育ってこわいね。

 

 わたしが中学生くらいのときだったろうか、叔父が結婚するという話が出た。なんかよくわからんがなんかわからん女性と知り合ってなんかよくわからんが結婚するらしいということを祖父が父親に連絡してきたのだ。意味がわからん。意味がわからんので父親は祖父宅を訪ねることにした。理由は忘れたが、なんかの用事のついでだったのか? わたしもついていった。

 父親が祖父に話をきくと、「叔父が結婚する」、「結婚相手の母親は病気らしい」、「金をいくらか貸してる」、「会わせろというが先方が会いたくないそうで、顔を合わせたことはない」ということを説明しだした。

 詐欺以外のなに?

 わたしはマジかよ正気か? と思いながら話を聞き、父親は「いやそれはおかしい」とひたすらに説得していた。叔父はたぶん父親が来てなんやかや言われるのをきらってどっかへ出かけていた。

 父親は常識的な説得を試みていたが、祖父は四十をすぎた息子がやっと結婚するということにかなり期待をかけているようで、聞く耳をもたない。ついでにいうと父親はかなりのファザコンなので、あまり祖父に強くものを言えていない。さらにいうと祖母は奇人のたぐいで、とくになにかにかかわったりはしないし、父親はこの祖母が大嫌いなのもあり、祖母があらゆることに無関心なのもあり、祖母はあらゆることに関係してこない。ちなみに孫はそこそこかわいがってくれる。

 あからさまに詐欺の事案を聞いただけで帰る車中、父親が助手席に座るわたしに「結婚するってのに親にも会わんっておかしいよな? 金までかりとるのに」とマジトーン言ってきた。中学生の娘に言うことじゃないだろと思いつつ、「どう考えても詐欺じゃん。おじいちゃん結局いくら貸したの、顔も知らん人によく貸せるよね」「わからん……〇〇(叔父の名前)と話さんことには……」とか言っていた。

 

 まあ結局この件はどうにもなることなく、当然詐欺で、叔父は結婚できず、金はかえってこず(何百万とか何千万単位)、父親はなにもできることはなかった。

 父方の男ども、父親をふくめて、無能。祖父は詐欺で大金を失うバカジジイ、叔父はあからさまな結婚詐欺に食いつくジジイ、家では暴君としてふるまっている父親は役立たずの無能ジジイだった。

 世間体(笑)とかなんとかあるので、たぶんこの件は警察には届け出ていないと思う。

 

祖父の話

 祖父があるとき突然言い出した。家を建て替えると。祖父宅は二階建ての一軒家でかなり古く、冬は寒い。なかなかレトロなつくりでわたしはその点だけは祖父宅を気に入っていたのだが、住んでいる家主が立て替えるというんだから反対する理由も権利もない。ハイハイ立て替えるんですね、と受け入れた。いま思うと、もうちょっと二階を探検しておけばよかった。

 

 祖父はまた言った。立て替えて二世帯住宅にすると。二世帯ってなに? 一世帯は祖父祖母叔父? 叔父は世帯主? だったらもうすでに二世帯じゃない? ここんとこよくわからんが、とにかく、いっしょに住もうぜということだ。

 全員が嫌がった。

 ファザコンの父親さえ嫌がっていた。

 すでにマンションの一室ではあるが家はあり、3LDKでとくに不自由はないのだ。祖父宅の敷地は狭く、どう考えても居住領域はいま住んでいるところよりも狭くなる。車もすでに祖父、叔父の車で車庫はいっぱいなので、駐車場をあらたに借りなければいけない。というかすでに家があるんだよ家が。祖父宅と父親宅はおなじ市内ではあるがかなり離れているので、学校やらなんやらの問題も出てくる。いくつくらいのときだったか忘れたけれど、中学生だったら確実に転校だし、高校生だったら確実に遠くなる。唯一父親の勤務地だけが多少近くなりはするのだが、父親は公務員で異動が多いので、そのメリットもいつまでつづくかわからない。

 こういう現実問題のうえに、感情的な問題もあった。祖父とはたまに会う程度なら我慢できるが、毎日顔を合わせるとなるとうんざりするだろう。母親は、娘を生んだときに「なんだ、女か」と吐き捨てたという祖父を心底恨んで嫌っているので、耐えられないだろう。祖母は無害だからいい。叔父はなんかイヤだった。父親以外全員女という家庭で育ったので、気が合わないし仲良くもないがなれなれしい異性というのはちょっとどころではなくだいぶイヤだった。思春期をなめるな。

 

 こうして全員が難色を示し、父親が代表して「おれたちは絶対に引っ越さんし、建てても住まんから、建て替えるのはいいが二世帯住宅は無駄だからやめろ」と訴え続けたが、驚くべきことに、二世帯住宅は建った。クララが立った。ずっと座っていろ。

 二世帯住宅というと、ふつう、玄関が別で基本的に別個の家、みたいなのを想像すると思うが、祖父考案の二世帯住宅はちがった。敷地が狭かったので玄関を二つ用意できなかったのだ。よって玄関はひとつ。ふつうに一階と二階があって、ふつうの階段でつながっていて、一階にも二階にも風呂と台所とトイレと洗面台があるだけの、謎の二世帯住宅だった。

 ていうかこれ、ただの家じゃん?

 この設計を受けた建築会社とか、不思議に思わなかったんだろうか。もういっそ、ふつうの家でよくね? 台所とかふたつずつつくるの無駄じゃね? ただでさえ狭いのに、さらに狭くならね? これで二世帯が暮らすの、無理じゃね? そう思わなかったんだろうか。どうでもよかったんだろう。まあひとの家の事情だしな。

 ついでにいうと、部屋はびっくりするくらいひとつひとつの部屋が狭い2LDKだった。姉といっしょに二階へあがり、その狭さに「うわあ……」「うわ……」とドン引きしまくったのを覚えている。なんとなく、アンネ・フランクたちが隠れ暮らしたという『後ろの家』を思い出したが、さすがにそこまで狭くはなかった。

 

 できたからと言って、ファザコンの父親もさすがに引っ越そうとは言わなかった。祖父も引っ越してこいとは言わなかった。なんのために二世帯住宅は建ったのか、その意義はずっと謎だったが、「物置につかえるな」、とだいぶ経ってから父親が言い出したりして、じっさい、自分の趣味のものをときどき運び込んだり取り出したりしていた。あとになってから、盆や正月に祖父のきょうだいたちが来たりするときに、泊まる部屋になったらしいと聞いた。よかったネ。

 ちなみに、絶対に住まないからなと言い聞かせたとき、祖父は、「〇〇(叔父)が結婚したら住むから」みたいなことも言ったらしい。結婚したら謎の二世帯住宅で義両親と同居確定の四十代男性。叔父の結婚難易度が上がった気がした。

 

 

 父親はキチガイであるのだが、父親を実家に置くと、常識人になるのはなんとも不思議である。結局のところ、父親は、実家においても外面なのかもしれない。自分の家庭を得てようやく、自分の内面をさらけ出すことができたのかもしれない。そうだとしたら、父親はおそらく一生実家を出ることなく暮らすべきだったのだろう。