うつでなまぽ

うつ病で生活保護受給者中の生きものがいろいろ書きます。

社会「最低賃金、あまりにも低すぎないか問題」

 ちょっとまえに、「最低賃金を時給1500円に上げろ」というデモだか運動だかがあったと思うが、私の見るかぎりでは高すぎるとか無茶言ってるというような冷笑的な反応が大半であったように思う。「段階的に要求していくべきでは」という意見もありはしたが。

 わたしは税についての専門家ではなく、理系の端くれであって、ころころ変動する法律などには弱い。やたらと誤解がないように、あるいはどうとでもとれるように気づかって書かれる結果的に読みにくく分かりにくい文章なども嫌いだ。なのでこれから書くことには失笑レベルの間違いが含まれているかもしれないことをどうか了承してから読んでほしい。読んでから失笑してコメントでまちがっているところを指摘してくれるひとがいたらとても感謝申し上げたい。そんなひとが存在するかもしれない可能性にすでに感謝申し上げておく。

 

 現在の最低賃金って、ちょっとのけぞってしまうほど低くはないか。

 厚生労働省のこのページを見てほしい。

www.mhlw.go.jp

 900円を超えるのは東京(958円)、神奈川(956円)、大阪(909円)の三府県のみ。それも大阪はかろうじてというありさま。横にあるカッコ内の数字は平成28年度の数字なので、上がっているといえば全都道府県上がっているのだろうが、それにしたって低いだろう。

 九州(福岡(789円)以外軒並み737円)や東北(宮城772円、福島(748円)以外おおむね738円)はあまりにも低い。一円違いなので九州のほうに合わせて計算してみるが、737×8時間×20日間=11万7900円。生活保護となんら変わりない数字である。

 しかし、福岡を除く九州の各県では、正社員で、月収全額がこの値段であっても、違法ではないのだ。東北の宮城福島青森(青森は他県より1円高い)を除く各県では、これにプラスして1600円ほど経営者が労働者に支払うなら、これもまた違法ではない。

 しかしこれで「文化的な最低限度の生活」を営んでいけるだろうか? はなはだ疑わしいと言わざるを得ない。

 

 ちなみにもっとも最低賃金が高い東京にあっては、958×8時間×20日間=15万3280円。これならまあまあ暮らしていける……のだろうか。TOKYOはさすが経済の中心地だけあって格差があるなあ。この格差を作ったのはだれだあ! と言ってもやっぱりこの数字も低い。

 

 私は生活保護を受けていて、現在の受給額はおおむね月に10万3000円。うち7万6000円ほどが最低生活費であり、2万7000円が住宅扶助となっている。計算が簡単になるよう多少(数百円程度)盛って端数をなくしている。

 

 これを見て「生活保護はもらいすぎだ! もっと受給額を減らせ!」と反射的に考えるのは間違っている。かといってべつにわたし自身や受給者を擁護したいわけではない。むしろ指弾してみることにする。

 わたしの受給額が10万3000円と先に述べた。これは正直な額であり多少盛ったとはいえそこそこ正確な額である。しかしながら、わたしの場合は住宅扶助が低いのだ。安い部屋に住んでいるから。断っておくがべつにあばら家ではないし風呂トイレキッチンエアコンはついているし気に入っている部屋だ。大島てるで調べたが事故物件でもない。わたしが住んでいる地域の家賃と比べてもなかなか破格の家賃である。しかし、わたしがもし3万とか4万とか(住宅扶助には上限があるが、その上限ぎりぎりの)の住宅に住んでいれば、上に書いた生活保護レベルの「最低賃金」に近くなる、場合によっては超える可能性すら出てくる。

 もっと言うなら生活保護受給者は基本的に税金などは払わずに済む。所得税、住民税など。消費税、自動車税(原付などを所持することが許可された場合)以外の税金は払わなくてよい。年金については法定免除(未納にはならずにすむ、老齢年金が半分になる、追納可能)ということになり、健康保険は脱退、通常の保険診療に該当する医療行為、薬の処方については全額医療扶助というかたちで現物支給として国が支払ってくれるので実質免除ということになる。

 こういう、言ってしまえば見えない収入が生活保護にはあるのだ。これによって確実に最低賃金よりも生活保護費のほうが高い、と言える。

 

 ここでまた「生活保護費を減らせ!!!」と思うひとが出てくるかもしれないがやっぱり待ってほしい。言っておくが生活保護費を減らしたところで最低賃金は上がらない。最低賃金レベルで働いているひとからみれば、働かずに自分よりも高い金が入ってくる生活保護者が憎いと感じるかもしれない。それは正しい感情だが、その感情に従ってバッシングに走ってもなんの益もない。苦しむ人間を見るのが三度の飯より好きというならべつだが、苦しむ人間はなにも受給者だけではなく「生活保護費を減らせ!!!」とバッシングに走るひともそうなる。

 そうやって、労働者VS生活保護受給者の図式で争うことで、笑うのは政府や経営者や経団連くらいのものだろう。最低賃金を上げなくとも、生活保護受給費を下げたり、実数の少ない不正受給についてことさら言い立ててさらなるバッシングをまねくようにするだけで、労働者のガス抜きがすむのだ。労働者自身の賃金があまりに低いことに対しては無自覚でいてくれる。

 そして最低賃金を1500円以上に、というデモや運動を冷笑する。そんなことができるわけがないだとか、求めすぎ調子に乗りすぎだとか。いまの最低賃金が低すぎるから上げようという話をしているのに、最低賃金を上げるんだったら、それなりの見返りを経営者にあげなくちゃね? など、勝手に経営者や経団連の表立っては言いたくない本音を労働者自身が代弁してくれるようになる。政府は高額納税者である経営者や経団連の機嫌を損ねることが確実である賃上げを政府主導で行う必要がなくなって万々歳だ。すばらしい国、日本。

 

 日本はいまだに、労働者が経営者を忖度して接待する国だ。自分がしあわせになるためには、他人を踏みつけるか、他人を自分よりも引きずりおろして見くだすことをえらぶ日本人。「あいつよりはマシだ」で満足して、「必死」に変革をなそうとする人間を冷笑して、なにかをなしたかのようにして生きる日本人。

 最低賃金があまりにもお粗末なまま上がらないのもうなづける。日本人を満足させるには、変革よりも革命よりも、ただみんなが変わらず不幸であり、幸福なものはお上におわし、足の下になにか失敗した愚図がいればいいのだ。

 わたしがうつ病を治して社会復帰できるころには、もっと社会が変わっていればいいなあなどと思っている、そんな他力本願なわたしも"立派な"日本人だ。万歳。