うつでなまぽ

うつ病で生活保護受給者中の生きものがいろいろ書きます。

こもごも「病院に勤めていたときの思い出」

 生涯で就職していたたったの三年間、どこに勤めていたかというと病院だ。職種は黙っておく。とりあえず医者でも看護師でもない。注射とかできないから。というか三年間病院に勤めたというかまあ途中老人ホーム的なところに行ったりもしたわけだが異動で。そのへんはまあどうでもいい話である。

 

 いちおう急性期も受け付けてはいるけれども救急病院というわけではなく、まあ老人病院だった。50代の患者が入院してくるとマジで若さに感動するようなレベル。いや冗談じゃなく真剣に。だいたいが在宅介護や老人保健施設などで熱発とか褥瘡とかなんとかで入院してくる患者ばかりなので、70~80代があたりまえなのだ。50代以下は若い。30代とか20代とかがごくまれに入院してくると、事故ったなコイツ! と一瞬で判断してしまうレベル。そして当たる。

 そして近辺に質の悪い老人保健施設があったので、そこの入所者が褥瘡(いわゆる床ずれというやつ)で入院、看護師の体位交換やら洗浄やらデブリ(壊死した部分を切り取る)やら消毒やら保湿やら、食事療法によるアルブミン値(血液内で浸透圧を調整している蛋白質。とくに機能はないが栄養状態が悪化すると低くなるという特徴がある)の管理、亜鉛やアルギニンの補給などをしてよし治ったよかったねと退院させたら一か月ほどでまた同じ状態で同じ入所者が再入院してくる、なんてことがよくあった。看護師はぶちぶちと文句を言う。看護師は気が強いひとが多いので相手方にも言う。でも相手方はのらくらと言い逃れる。看護師はさらにぶちぶち言う。話をきくに褥瘡ができてもほとんど洗浄なども行わずに大きくなったら病院に投げてくるらしい。おいおい。

 そこは委託給食会社を入れていて、これもまた質が悪く、ある機会に献立を見せてもらったら栄養バランスがあまりにもクソアンドクソでこれなら無資格でも立てられそうな感じでこれで金もらえるならここで働きたいなと思った。嘘。クソすぎて死にそうと思った。老人が食えるのか疑わしい油ギッシュな肉ばかり使っているのでそれについて聞いたらカロリーの帳尻あわせのためにその肉を使っていることにしているだけで実際は違う肉を使ってるから大丈夫なんですよという。いや何が? 何が大丈夫なんだ? 朝につける牛乳がなぜか低脂肪乳になっていて、老人ばっかなのに一律低脂肪にする必要ある? と思ったら低脂肪のほうが一個何円か安いのでそっちにしているということだった。なんなんだ? これが仕事なのか? 勤めていた病院もブラック(というか病院はたいていブラック)だが、これはもう違法性があると言って差し支えないのではなかろうか。保健所に連絡すべきだったのだろうか。経験少ない労働者だったのでわからなかった。ただ異星人を見た気分にはなっていた。

 

 患者のほうの話はある程度あいまいに。というか患者の主な相手は看護師に介護士なのでそこまで関わらない職種だった。ただ、白衣を着ていたので医師と間違われることがあった。いちおう区別のため医師は純白、他コメディカル(医師はメディカル、看護師やらなんやらの医師ではない医療従事者はコメディカルまたはパラメディカルと呼ばれる)は薄っすら色付きということになっていたのだが患者にそんなものが通用するか。しかもほんとうに薄っすらだから絶対老眼とかだと見分け付かない。

 患者はいろんなひとがいる。ただ病気だけとか認知症入ってるとかもはや会話不能とか。あ、普通に話せるな、と思った相手でもよくよく聞いていると言っていることがおかしいとか同じことをただ繰り返しているとかあったりする。また、入院直後はわりとしっかりしていたのに、入院中の刺激の少ない生活のせいか? 素因があったのか? どんどん認知症が重くなっていく患者もいたりする。こういう患者はややせつない。シャキシャキと自立歩行していたのが、杖になり、車いすになり、食事は介助になっていく。言葉が通じなくなっていく。

 

 患者の家族、これがおもしろい。おもしろいと言ったらいかんのだろうがおもしろい。病院に勤めてるひと、老人施設に勤めてるひと、みんな言うと思う。「ふだん見舞いに来ない家族親類縁者ほど、居丈高で無茶な要求をしてきてうるさい」。「ちょくちょく見舞いに来て食事介助などしているご家族ほど、職員に対して腰が低く、要求も的確」。

 たま~にしか来ない患者の家族って、そのときのようすしか見てないのに要求してくる。リハビリのこととか食事のこととか。いや、きょうはちょっと調子がいいんですよとかめずらしくひとが来たからちょっと見栄はってしっかりしてるように見せてらっしゃるんですよ……というやつ。なんでだろうな。葬式とかでもよくきくよな、介護に参加しなかった者ほどおおげさに嘆き、介護に尽力したものほどすでに受け入れ態勢ができていて冷静だという。

 

 あー、こう書いてると働いてるときのことを思い出す。たのしかった。たのしかったんだよなあ。上がクソすぎてやめたけど。あと、忙しいなか、やっと補充された人員が経験だけ長い無自覚発達障害だったのもきいた。いや発達障害だったそのひとが悪いわけじゃない。もっと余裕があれば対処できた。ただ死ぬほど性格が合わなかったし時間も余裕もなかったんだ。仕事、やめなきゃよかったかなあとか思うと、すぐにそのひとの顔が浮かんで、いや、あのひとと一緒には働けないわ、と思って後悔が消えるので、ある意味感謝している。ひどいことかもしれないけど。

 

 そうだな、働くのは好きなんだな、いま働ける気とかはぜんぜんしないんだけど。