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うつでなまぽ

うつでなまぽな生活です。

こもごも「いちごジャムと戦略」

 スーパーのジャムコーナーで、各社のいちごジャムを見くらべていた。値段、糖度、原材料。ジャムは甘ったるくてなんぼだと思う。低糖度とか、砂糖を使用していませんとか、しゃらくさい。甘いほうがいいし、砂糖をたくさんつかってほしい。それをパンに塗って食べる。甘くておいしい。おやつに最適。

 

 ジャムは各社ごとに規格がちがい、値段を考えるには100gあたりのだいたいの値段を算出する必要がある。これがけっこうめんどうくさい。150gとか450gならまだいいけれども、ものによっては235gとか、ものすごい半端なg数が出てきたりする。その5gいる? 切り捨てるか切り上げるかできない? って思う。

 

 まあ、てきとうに端数を処理して、100gあたりの値段を比較していると、おじいさんがそばに立った。

 

 邪魔かもしれん。

 

 そう思い、計算比較はとりあえずやめて、売り場を一周するなりして、この場をおじいさんにゆずらなければならない。と考えたとき、なんかおじいさんが話しかけてきた。ジャムを指さしている。だがイヤホンをつけていたのでさっぱり聞こえない。

 

 イヤホンを片方はずし、「はい?」とききかえすと、おじいさんは、

 「こんジャムな、やすならんねえ」(訳:このジャムは安くならないですね)

 という。

 

 さしているのは税抜188円のいちごジャム。容量はたぶん150gくらい。

 

 思ったことは、「いや知らんけど」。主食はごはんか麺類派なので、パンはあまり食べない。よって、ジャムコーナーもあまり見ない。いちごジャムの割引事情など知らない。

 

 おじいさんはさらにつづける。

 

 「週末の大売り出しんときなら、いつもは、100円ぐらいで売っとるけど、最近はならんね」

 

 いや知らんけど。と思いつつ、「最近は、いちごも、高いのかも……」などとよくわからない追従を述べる。

 

 おじいさんは聞いてるのか聞いてないのか、

 「最近な、やすならんねえ」(訳:最近は、安くならないですね)

 と、やや無念そうにいう。

 

 沈黙。

 

 沈黙と言っても、会話が終わったことを意味しない沈黙。この場を去るためには、「それじゃあ……」とひと声かけなければ失礼になるたぐいの沈黙。なんかしゃべらなければならないような感じの、気まずいやつだ。

 

 意を決し、「それじゃあ……」と言いかけたのを制するようにおじいさんが、ふたたび、

 「大売り出しのときな、100円になったとけどねえ」

 さっき聞いた。

 このおじいさんのいちごジャムを買うときの戦略は、週末の大売り出しで188円が100円に値下がりしたときをねらうものだと、もう知っている。

 最近は不景気のためか安くならないことも把握した。

 これ以上、どうすればいいのか。

 

 そう考えていると、おじいさんはふいにこちらに笑いかけ、

 「しょんなかね」(訳:しょうがないですね)

 と言い、ジャムを取ることなく去って行った。

 

 おじいさんといちごジャムと戦略。

 以前は188円(税抜)のいちごジャムが週末の大売り出しで100円になっていたこと。

 最近はならないこと。

 

 どうでもいいのか、そこそこ有用なのかよくわからない情報を手に入れ、結局ジャムは買わずに帰った。

 よく考えたら、家の冷蔵庫に、ピーナツバターのやたらにでかいのがあることを思いだしたから。